1.乾燥概論
1-1乾燥の目的
私達の生活の中で乾かすということは、頻繁にあると思います。洗濯ものを乾かすこと、食器を乾かすこと、ふとんを干すこと、髪の毛を乾かすこと、手を乾かすことなどがあります。また、乾燥した食品も多く見られます。あじの干物、ふりかけ、インスタントコーヒー、塩、砂糖、小麦粉、かつおぶし、インスタントラーメン、粉末の薬などいくらでも見かけることが出来ます。私達が作っているのはこういった品物を乾かす装置です。
何故、乾かすのかというと、食品の場合は水分が一定以上になると腐ったり、風味が変わったりということがあったり、インスタントコーヒーなどは水分が高いと水に融けなくなってしまうことがあります。また、顆粒を作ったり、粉に水溶液を混ぜて味付けしたりすると必ず乾燥が必要になります。ですから、目的は保存性、水溶性、風味の保持、軽量化、散布性などがあります。
粉を造粒加工する場合、水や有機溶媒を混ぜますが、製品の状態ではそれらを除去しなくてはなりません。乾燥操作は水や有機溶媒の除去を目的とします。但し、その粉体の使用目的によって、水分を0にする場合と、若干の水分を保たせる場合があります。主薬の分解や経年変化、微生物の繁殖を防止し安定性を向上させる目的では水分を0にしています。打錠工程では水分を0にすると割れが生じやすくなるので、この場合は水分を保たせることが必要となります。
粉を造粒加工する場合、水や有機溶媒を混ぜますが、製品の状態ではそれらを除去しなくてはなりません。乾燥操作は水や有機溶媒の除去を目的とします。但し、その粉体の使用目的によって、水分を0にする場合と、若干の水分を保たせる場合があります。主薬の分解や経年変化、微生物の繁殖を防止し安定性を向上させる目的では水分を0にしています。打錠工程では水分を0にすると割れが生じやすくなるので、この場合は水分を保たせることが必要となります。
1-2.乾燥するということ
乾燥ということを別の形で表現すれば、ある品物に付着した水分がそれから分離して他の流体に移動することになります。例えば水滴を考えてみますと、水滴の表面に風が当たると、水分が水蒸気になって、空気と混ざって移動するということです。湿った粉の場合、粉に付着した水分が風に触れてさくら吹雪が舞うように空気の側に移動するということになります。
実際、乾燥がどのように進むかということを、十分に湿った材料を一定の温度、湿度及び風速の空気の中に置いた場合について考えてみましょう。
最初、その材料が乾燥条件の空気と平衡する温度に達するまで上昇します。その後、水分が蒸発することで材料の温度はしばらく一定の温度を保ちます。この温度は近似的にその熱風の湿球温度になります。そして、材料表面が乾いてきて水分が減ってくると温度が上昇して、乾燥条件の温度とほぼ同じ温度になって乾燥が終了します。
熱風循環式乾燥の場合、空気と水分の関係はちょうど雑巾で、濡れた床を拭くのとよく似ています。
吸気口から入った空気はヒータで加熱され沢山の水分が吸収出来る状態になった後、乾燥室に入って品物から水分を受け取って湿度が上がり、その空気の一部は排気されます。残りは再びヒータで加熱されて乾燥室に入ります。
これを拭き掃除になぞらえると次のようになります。まず、新しい雑巾を広げて濡れた床を拭き、雑巾が水を吸収します。濡れた雑巾の一部を捨て、残り雑巾を広げて新しい雑巾と一緒に使って、再び床を拭くということになります。ですから空気が雑巾にあたり、広げる行為はヒータ、雑巾を移動させるというのはファン、そして湿った雑巾を棄てるのは排気にあたります。
ワンパスの場合、新しい雑巾がどんどん供給されて、水分を拭き取りそのまま捨てられるということに似ています。
最初、その材料が乾燥条件の空気と平衡する温度に達するまで上昇します。その後、水分が蒸発することで材料の温度はしばらく一定の温度を保ちます。この温度は近似的にその熱風の湿球温度になります。そして、材料表面が乾いてきて水分が減ってくると温度が上昇して、乾燥条件の温度とほぼ同じ温度になって乾燥が終了します。
熱風循環式乾燥の場合、空気と水分の関係はちょうど雑巾で、濡れた床を拭くのとよく似ています。
吸気口から入った空気はヒータで加熱され沢山の水分が吸収出来る状態になった後、乾燥室に入って品物から水分を受け取って湿度が上がり、その空気の一部は排気されます。残りは再びヒータで加熱されて乾燥室に入ります。
これを拭き掃除になぞらえると次のようになります。まず、新しい雑巾を広げて濡れた床を拭き、雑巾が水を吸収します。濡れた雑巾の一部を捨て、残り雑巾を広げて新しい雑巾と一緒に使って、再び床を拭くということになります。ですから空気が雑巾にあたり、広げる行為はヒータ、雑巾を移動させるというのはファン、そして湿った雑巾を棄てるのは排気にあたります。
ワンパスの場合、新しい雑巾がどんどん供給されて、水分を拭き取りそのまま捨てられるということに似ています。
1-3.乾燥空気について
1-3-1.乾燥しやすい条件
洗濯ものはどんなときによく乾くのでしょうか。それは、暖かくて晴れていて風が吹いている日であることは、私達は経験的に知っています。これを乾燥条件としてとらえるならば、
① 暖かい・・・・・・温度が高い(蒸発しやすい)
② 晴れている・・・・湿度が低い(水分を受取りやすい)
③ 風が吹いている・・風速が高い(水分が移動しやすい)
ということになります。
こんな日はおそらく異常乾燥注意報が出されていると思います。ですから、私達の作っている装置は強制的にこの状態を作り出して、短時間で乾燥させてやっているわけです。実際、時間をいくらかけてもよいのであればほとんどの品物の場合、天日に干しておけばよいのですが、スペースの問題や手間、異物の混入、品質管理の問題などからこういった装置が必要になるわけです。
① 暖かい・・・・・・温度が高い(蒸発しやすい)
② 晴れている・・・・湿度が低い(水分を受取りやすい)
③ 風が吹いている・・風速が高い(水分が移動しやすい)
ということになります。
こんな日はおそらく異常乾燥注意報が出されていると思います。ですから、私達の作っている装置は強制的にこの状態を作り出して、短時間で乾燥させてやっているわけです。実際、時間をいくらかけてもよいのであればほとんどの品物の場合、天日に干しておけばよいのですが、スペースの問題や手間、異物の混入、品質管理の問題などからこういった装置が必要になるわけです。
1-3-2.空気中の水分
箱型乾燥機の場合、乾燥温度については関心が払われてきましたが、乾燥機内部の湿度についてはあまり考慮の対象とはならなかったようです。医薬品の乾燥の場合、乾燥温度が50℃~70℃で、あまり高くありません。このくらいの温度で乾燥させる場合、季節による空気の状態の変化の影響を非常に受けやすく冬場と夏場では、絶対湿度が全く違うので、いくら温度を一定にしたところで、平衡水分が全く違ったものとなります。夏場になると乾燥温度を上げて生産している場合もあるようです。空調された製剤室の空気を取り入れることが可能であれば良いのですが、生産用でワンバッチ100kg程度を処理する乾燥機の場合でも、空調のバランスを崩してしまうので、外気を取り入れることが多くなります。
研究室において作られるサンプルは、空調のきいた部屋の空気を取り込んで乾燥しているので、おおむね絶対湿度は10g/kgDAです。冬場では特に晴れた寒い日などは3g/kgDA程度まで下がりますが、夏場では20g/kgDAにもなります。(図4)
夏場でワンパス運転した空気の状態を考えると、1m×1mに広げられた粉に0.4m/sで風が通過したとすれば、24m3/分(31kg/分)の風量となり、空調された空気に対して1分間で
31kg×(20g-10g)=310gの水をスプレイした状態にしていることになります。1分間で牛乳瓶1.5本分以上の水が足された空気が粉を通過していると考えれば、乾燥状態が全く違ってくるのは、容易に想像出来ます。
研究室において作られるサンプルは、空調のきいた部屋の空気を取り込んで乾燥しているので、おおむね絶対湿度は10g/kgDAです。冬場では特に晴れた寒い日などは3g/kgDA程度まで下がりますが、夏場では20g/kgDAにもなります。(図4)
夏場でワンパス運転した空気の状態を考えると、1m×1mに広げられた粉に0.4m/sで風が通過したとすれば、24m3/分(31kg/分)の風量となり、空調された空気に対して1分間で
31kg×(20g-10g)=310gの水をスプレイした状態にしていることになります。1分間で牛乳瓶1.5本分以上の水が足された空気が粉を通過していると考えれば、乾燥状態が全く違ってくるのは、容易に想像出来ます。
1-3-3.粉の中の水分
物質中の水分を分類すると、品物の粒子の表面に付着しているだけの水分と、品物の内部に吸収もしくは溶けこんでいる水分があります。前者を遊離水、後者を結晶水といいます。一般に水分測定の対象としているのは遊離水のほうです。結晶水は特別な品物を除いて、ほとんどは高温にしなければ除去出来ません。
被乾燥物の水分の表し方として、2種類の方法があります。一つは粉粒体と水分の和の全重量にたいする水分(ウェットベース WB)、もう一つは粉粒体の重量にたいする水分(ドライベース DB)があり、どちらも%で表します。
被乾燥物の水分の表し方として、2種類の方法があります。一つは粉粒体と水分の和の全重量にたいする水分(ウェットベース WB)、もう一つは粉粒体の重量にたいする水分(ドライベース DB)があり、どちらも%で表します。
通常ウェットベースの方がよく使用されます。考え方は、濃度などと同じです。
水分(WB)= 水の重量/全重量 = 水の重量/(粉粒体の重量+水の重量)
水分計
水分(DB)= 水の重量/粉粒体の重量
水分測定は赤外線加熱式水分計を使用することが多いです。
弊社にて乾燥実験する場合、乾燥機を目的とする乾燥条件に設定し、トレイを含めた試験材料の重量を一定時間ごとに測定します。
数時間にわたり全く変化しない所を0%にし、逆算して初期水分を求めて乾燥曲線を作成します。
水分(WB)= 水の重量/全重量 = 水の重量/(粉粒体の重量+水の重量)
水分計
水分(DB)= 水の重量/粉粒体の重量
水分測定は赤外線加熱式水分計を使用することが多いです。
弊社にて乾燥実験する場合、乾燥機を目的とする乾燥条件に設定し、トレイを含めた試験材料の重量を一定時間ごとに測定します。
数時間にわたり全く変化しない所を0%にし、逆算して初期水分を求めて乾燥曲線を作成します。
1-3-4.湿度線図
線図上に、乾球/湿球温度/露点温度、絶対/相対湿度、エンタルピーなどを記入し、その中から2つの値を求めることにより、湿り空気の状態が分かるようにした線図のことです。
不飽和空気ではつかみにくい乾球温度や相対湿度、絶対湿度、 比エンタルピーなどの相互関係を比較対照して線図にしています。上は低温用で、主に外気温度の状態を知るのに用います。下は温度範囲が0℃~120℃で、乾燥庫内の状態を知るのに用います。
不飽和空気ではつかみにくい乾球温度や相対湿度、絶対湿度、 比エンタルピーなどの相互関係を比較対照して線図にしています。上は低温用で、主に外気温度の状態を知るのに用います。下は温度範囲が0℃~120℃で、乾燥庫内の状態を知るのに用います。
1-3-5.乾燥機内の空気について
ここでは除湿を含めた空気による乾燥について説明します。
⓪(外気)は吸気フィルタを通って除湿クーラで冷却された空気は乾燥機内に入ります。
①冷却後乾燥機内に入った空気は乾きすぎている場合、スプレイで加湿されます。
③加湿後ヒータで加熱され水分を奪うキャパシティが大きい状態となって送風されます。
乾燥室に入った④熱風は、水分を含んだ粉体を通過し、水分を奪います。
送風される熱風が含むことの出来る水分は、温度が高いほど大きくなります。これは、空気の飽和水蒸気量が温度とともに大きくなるということと同じです。
粉体を通過します。奪う水分が多いほど、潜熱が大きくなり、空気の温度が下がります。
⑤排気される水分は、もともと持っていた熱風の水分と粉体から奪った水分の和となります。
乾燥速度の遅い装置や、粉体の水分が少ない場合、奪う水分が少なくなるので、温度が下がらず、水分を奪うキャパシティが大きいまま捨てられることになるので、箱型乾燥機の場合、⑤排気を戻し一部分が排気ダンパから排出されます。
冷却された空気①と⑥循環してきた空気が混ざって②加熱前循環空気となります。
全量循環させると、空気の湿度が上がり、水分を奪うキャパシティが無くなってしまうので、相対湿度が維持できる量だけのフレッシュエアを取り込めば良いことになります。
フレッシュエアの量が少なければ、相対湿度が上がり、乾燥時間が長くなり、多ければその逆となります。
乾燥実験により時間とともに水分が減る量を記録し、最大乾燥速度を求め、乾燥機内の相対湿度が低く押さえられる程度の空気量に設定します。
⓪(外気)は吸気フィルタを通って除湿クーラで冷却された空気は乾燥機内に入ります。
①冷却後乾燥機内に入った空気は乾きすぎている場合、スプレイで加湿されます。
③加湿後ヒータで加熱され水分を奪うキャパシティが大きい状態となって送風されます。
乾燥室に入った④熱風は、水分を含んだ粉体を通過し、水分を奪います。
送風される熱風が含むことの出来る水分は、温度が高いほど大きくなります。これは、空気の飽和水蒸気量が温度とともに大きくなるということと同じです。
粉体を通過します。奪う水分が多いほど、潜熱が大きくなり、空気の温度が下がります。
⑤排気される水分は、もともと持っていた熱風の水分と粉体から奪った水分の和となります。
乾燥速度の遅い装置や、粉体の水分が少ない場合、奪う水分が少なくなるので、温度が下がらず、水分を奪うキャパシティが大きいまま捨てられることになるので、箱型乾燥機の場合、⑤排気を戻し一部分が排気ダンパから排出されます。
冷却された空気①と⑥循環してきた空気が混ざって②加熱前循環空気となります。
全量循環させると、空気の湿度が上がり、水分を奪うキャパシティが無くなってしまうので、相対湿度が維持できる量だけのフレッシュエアを取り込めば良いことになります。
フレッシュエアの量が少なければ、相対湿度が上がり、乾燥時間が長くなり、多ければその逆となります。
乾燥実験により時間とともに水分が減る量を記録し、最大乾燥速度を求め、乾燥機内の相対湿度が低く押さえられる程度の空気量に設定します。