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箱型乾燥機 概論
医薬品製造において乾燥は、造粒やコーティングの後、製品に含まれる水や有機溶媒を除去する工程である。医薬品の場合、特に製剤の品質の確保にきわめて高度な配慮が要求される。乾燥操作において最も単純な箱型乾燥機に関しても例外ではなく、装置に高い信頼性が要求されることはいうまでもない。
箱型乾燥機は風の流れにより平行流と通気式に分類される。

1-1 箱型乾燥機の分類

1.平行流乾燥機
棚に置かれたトレイの上に粉体を広げ、その上を熱風が通過して粉体を乾燥させる方式である。この装置のメリットは、装置の大きさに対して一度に処理できる量が多い。通常、並行流の場合、乾燥時間は5時間以上となるものが多いため、1日1バッチまたは2バッチの生産となり、夜間運転させることが多い。
平行流乾燥機の場合、粉体上に流れる熱風の速度は、粉体が飛散する限界までとなり、通常2m/s程度が限界のようである。また、トレイに積む品物の厚みは30mm程度で、厚くなると乾燥時間が長くなり、乾燥むらが生じやすくなる。
このタイプの乾燥機は、トレイを取り出してしまうと、棚だけになるので、内部の点検がし易いというメリットがある。

2.通気式乾燥機
底網式のトレイに入れた粉体の間を直接熱風が通過して乾燥させる方式である。平行流よりも乾燥速度が速いというメリットがある。しかし、投入出来る粉体の密度が下がるため、平行流よりも乾燥機が大きくなる。
通気式乾燥機の場合、粉体内を通過する熱風の速度は、粉体のもつ通気性で非常に異なる。通常、医薬品の粉体の場合、0.5m/s程度で、それ以上の風速は、粉体が風により押さえつけられ、風が通りにくくなり、圧損が上がるだけのようである。また、トレイに積む品物の厚みは40mm程度で、厚くなると圧損が上がり通過風速が下がるため、乾燥時間が長くなり、乾燥むらが生じやすくなる。

図1 平行流乾燥機
図2 通気式乾燥機

1-2 粉体の通気乾燥について

1.乾燥の目的
粉を造粒加工する場合、水や有機溶媒を混ぜるが、製品の状態ではそれらを除去しなくてはならない。乾燥操作は水や有機溶媒の除去を目的とする。但し、その粉体の使用目的によって、水分を0にする場合と、若干の水分を保たせる場合がある。主薬の分解や経年変化、微生物の繁殖を防止し安定性を向上させる目的では水分を0にする。打錠工程では水分を0にすると割れが生じやすくなるので、この場合は水分を保たせることが必要である。

2.通気乾燥操作
水や有機溶媒を含んだ粉体をトレイ上の布の上に広げる。このとき出来るだけ厚みを均一にして広げることが必要で、また、各トレイに入れる量も均一になっていることも必要である。もし、ある部分だけ厚みが薄い場合、風はそこを選択的に通り抜けて、他の部分に風が流れないということになり、流れなかった部分が乾燥されないということになる。
また、乾燥速度を上げるために、通過風速を上げても、粉がしまって、ますます風が通らなくなってしまう。その状態で乾燥が進むと、ある部分ではせんべい状態になり、ある部分では割れが生じる。割れた部分から選択的に風が流れ、塊になった部分の中心に未乾燥部分が生じることになる。
上記のことから、乾燥操作のポイントとして、粉体の厚みを均一に広げる、各トレイに入れる粉体の量も均一にする、通過風速を上げすぎないということになる。

粉体の厚みと風の流れ

図3 粉体の厚みと風の流れ


3.乾燥空気について
乾燥空気について箱型乾燥機の場合、乾燥温度については関心が払われてきたが、乾燥機内部の湿度についてはあまり考慮の対象とはならなかったようである。医薬品の乾燥の場合、乾燥温度が50℃〜70℃で、あまり高くない。このくらいの温度で乾燥させる場合、季節による空気の状態の変化の影響を非常に受けやすい。冬場と夏場では、絶対湿度が全く違うので、いくら温度を一定にしたところで、平衡水分が全く違ったものとなる。夏場になると乾燥温度を上げて生産している場合もある。空調された製剤室の空気を取り入れることが可能であれば良いが、生産用でワンバッチ100kg程度を処理する乾燥機の場合でも、空調のバランスを崩してしまうので、外気を取り入れることが多い。
研究室において作られるサンプルは、空調のきいた部屋の空気を取り込んで乾燥しているので、おおむね絶対湿度は10g/kgDAである。冬場では特に晴れた寒い日などは3g/kgDA程度まで下がるが、夏場では22g/kgDAにもなる。(図4)夏場でワンパス運転した空気の状態を考えると、1m×1mに広げられた粉に0.5m/sで風が通過したとすれば、30m3/分(39kg/分)の風量となり、空調された空気に対して1分間で470gの水をスプレイした状態にしていることになる。1分間で牛乳瓶2本分以上の水が足された空気が粉を通過していると考えれば、乾燥状態が全く違ってくるのは、容易に想像出来る。
乾燥終了後、夏場の外気をそのまま取り入れて冷却すると、温度を上げて一旦乾燥させた製品にあらためて加湿操作していることと同じになってしまうので、湿度を一定に保つということが重要である。

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4.乾燥空気の計算
送風された熱風は水分を含んだ粉体を通過し、水分を奪う。送風される熱風が含むことの出来る水分は、温度が高いほど大きい。これは、空気の飽和水蒸気量が温度とともに大きくなるということと同じである。
乾燥機内に取り込まれた空気は、ヒーターで加熱され、水分を奪うキャパシティーの大きい状態となって粉体を通過する。奪う水分が多いほど、潜熱が大きくなり、空気の温度が下がる。排気される水分は、もともと持っていた熱風の水分と粉体から奪った水分の和である。乾燥速度の遅い装置や、粉体の水分が少ない場合、奪う水分が少なくなるので、温度が下がらず、水分を奪うキャパシティーが大きいまま捨てられることになるので、箱型乾燥機の場合、排気をリサイクルさせる。
全量循環させると、空気の湿度が上がり、水分を奪うキャパシティーが無くなってしまうので、相対湿度が維持できる量だけのフレッシュエアーを取り込めば良いことになる。
フレッシュエアーの量が少なければ、相対湿度が上がり、乾燥時間が長くなり、多ければその逆となる。乾燥曲線から最大乾燥速度を求め、乾燥機内の相対湿度が低く押さえられる程度の空気量に設定する。

吸気量、及び排気量をQf(kg/h)、循環空気量Qrとすると、熱風空気量Qhは
Qh=Qf+Qr・・・・・・・・・・・・・・・・・1式
図5の熱風Cはフレッシュ冷却後の空気@と循環風Eが混合したものであるので、熱風の水分HC(g/kg)は
HC=(Qf×H@+Qr×HE)÷Qh・2式
排気の水分HDは熱風Cが粉体から蒸発した水分W(g/h)を受け取ったものである。
また、排気Dと循環空気Eの湿度は同じであるから、排気の水分HDは
HD=HC+W/Qh=HE・・・・・・3式
必要とする空気量Qfは上記の式を整理して
Qf=W÷(HE―H@)・・・・・・・・・・4式
となる。すなわち、乾燥速度を湿度の差で割ったものが、最低必要空気量である。
逆に表現すれば、乾燥速度は、湿度の差と、フレッシュエアの量に比例する。
最大蒸発水分量は乾燥実験を行い、乾燥曲線から容易に求められるので、熱風湿度を管理出来れば、排気量を決定する事が出来る。

5.乾燥テクニック
メクラ板
 乾燥機の大きさに対して、投入量が少ない場合は、積厚は変えずに、トレーのメクラ板を置いて空気が流れないようにして、減らしたトレイの枚数に合わせて、循環風量を減らすことが望ましい。(図6)従来の箱型乾燥機の場合、そういった調節の出来るものが少なく、また、循環風量がモニター出来るものも無いために、現実的には乾燥条件が違うことを承知で乾燥させるか、投入量を変えずに乾燥させるしかない。
ほぐし操作
 固まりやすい製品の場合、水分量の多い状態で、強い乾燥条件を与えると、空気の通過する量の多い部分が先に乾燥し、選択的に風が流れ、せんべい状態になり、未乾燥部分が出来やすい。対策として、水分量の多い状態では、常温で運転し、水分がある程度下がったところで熱風に切り替えると改善されるようである。また、乾燥途中でほぐし作業を行うことが有効である。
湿度管理
 打錠前の工程での乾燥では、水分が0になると、錠剤の強度が下がる。この場合、乾燥室内の湿度を一定に保つため、湿度計の信号で水をスプレーするか、ピュアスチームを吹き込むことで加湿操作を行う。循環状態で加湿すれば、変動のない湿度が得られ、過乾燥に対して有効である。
図6 台車断面
   
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