2-5 信頼性
1.外気の季節変動対策
医薬品の乾燥の多くは、絶対湿度を10g/kgDA程度で、露点温度14℃程度の条件の空調された部屋の空気を基準にしている。年間通して一定の状態で乾燥させるためには、調質操作が必要になる。
梅雨時や雨が降って外気の湿度が高い場合、除湿しなくてはならない。吸気ダクト途中に除湿室を設け、熱交換器で冷却し露滴させて除湿するか、吸着式除湿器を使用する。
逆に、外気温度が低い場合、湿度が低下する。その空気を取り込み加熱すると、平衡水分値が下がり、過乾燥となる。対策としてピュアスチームを吹き込むか、純水をスプレイし加湿する。
乾燥機の場合、空気を加熱し温度調節するので、取り込まれる空気の温度はさほど重要ではなく、絶対湿度が重要であるので、それを管理すれば良い。
(乾燥機吸気用恒温恒湿装置)
2.目詰まりによる風量低下対策
ヘパフィルターの目詰まりによる風量低下を防止するためにその圧損をマノメーターで表示し、交換時期を判断出来るようにする。また風量がモニターされていることと風量調節することで、乾燥条件の変動を防ぐことが出来る。
3.正確な計器
各計器のキャリブレーションが容易なように配慮した設計にする。温度センサーなどがとりはずしやすいようにへルールクランプなどで固定したり、床に置かれたキャリブレーターや恒温槽、測定器類までセンサーが届くように配線を長くしたりする。(図15)
4.運転状態の記録
そのバッチが一定条件で乾燥したのかどうか、温度、湿度、風速を記録し、証明出来るようにする。今までは各トレイ上の温度だけを記録するというものが多かったが、最近では、風量、湿度まで記録するということが一般的になりはじめたようである。
5.制御安定性
医薬向け箱型乾燥機の場合、熱源を蒸気とする事が多い。夏場、吸気温度が高いと乾燥温度がハンチングをおこし、制御したい温度よりも高くなることがある。乾燥温度を一定にするために、熱交換機の大きさを最適に設計する事はもちろんであるが、80℃のワンパス運転でも、40℃程度の低温における循環運転でも安定した制御が出来なければならない。そのため、ヒーターを分割してパワーダウン出来るようにしたり、操作量の上限値を調節出来るようにしている。
また、各トレイの温度ムラも重要な問題である。箱型乾燥機の場合、空気が熱交換機を通過した時点では、流れの位置による温度のばらつきが大きいので、熱交換機の二次側にファンを配置し、吸い込んだ空気を攪拌すると、温度むらをなくすことが出来る。
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1.防爆
製剤の中間過程で有機溶媒が使用されるが、これを乾燥して除去する場合、乾燥機内が爆発雰囲気になる。そのため、乾燥機を安全に運転出来るようにするために、防爆の考え方を適用する。爆発または火災が発生するための条件として、危険雰囲気の存在と、点火源の存在が共存することが必要である。そのため、それらが共存する確率が実質的に0%になるような対策を施すことで、乾燥機の爆発を防止している。
熱源
有機溶媒を使用する場合、熱源は蒸気か熱媒体を使用し、熱源がガスに接触する温度を、ガスの発火点以下にしている。電熱ヒーターを使用する場合、仮に表面温度を制御出来たとしても、機器の故障等で発火点を超えてしまうおそれがあるので、通常は採用しない。
ワンパス運転
乾燥機内に危険雰囲気を存在させないようにする方法として、風の流れをワンパスにして乾燥空気をすべて排気すれば爆発性ガスが熱源と接触しないので安全である。しかし、循環運転に比べ非常に大きな熱源が必要となるので、比較的乾燥時間の長い、箱型乾燥機には向かない。
ガス濃度計
まず、危険雰囲気の存在を知るためにガス濃度計を設置する。ガス濃度が爆発下限界の25%を越えると、ヒーターを停止させ、温度の上昇を押さえる。またワンパス循環切替え可能な装置については、ワンパスにしてヒーター停止と同時に大量のフレッシュエアーを送り込む。こうすれば、乾燥初期において、ヒーターが入らずにワンパス送風運転になり、急速に加熱しなくなり、濃度の上昇が抑えられる。溶剤濃度が下がると循環加熱運転となるが、溶剤発生速度が上がったとしても再び、ワンパス常温運転に切り替えられる。実際には、初期ワンパス運転をタイマーと併用するので、循環運転に入れば、溶剤濃度が上がることは少ない。
爆発放散口
もし爆発したときの対策として、爆発放散口を設ける。爆発しても、爆風が爆発放散口以外に吹きでないように、乾燥機を頑丈にし、内圧が基準値よりも上昇しないように、その扉の面積を大きくする。設計基準値として内圧20kPaで開放する。また、爆発放散ダクトを設け、爆発放散口が開放したときに、爆風を屋外に逃がし、作業室に影響がないようにする。また、その形状はストレートとし、開放したときに、圧力が即時に逃げるように、ベンドにならないようにする。
静電気対策
点火源として、静電気も考慮しなくてはならない。乾燥機から静電気を除去するために、アースラグを設けて接地抵抗が100Ω以下になるように接地し、電気的に浮いた部分がないようにする。乾燥した粉と飛散防止布に静電気がたまることがあり、乾燥した粉体を飛散防止布から取り出す場合に2KV以上になることがある。
防爆機器
使用する防爆機器であるが、原則的に防爆指針に適合した機器を使用し、防爆の考え方にそって設計する。電動機は安全増防爆または耐圧防爆型を採用する。電磁弁、温度センサー等は耐圧防爆型を使用している。配線は安全増防爆または耐圧防爆型としている。
通常、乾燥機が設置される場所は2種場所であるので、電動機、配線などは安全増が採用されることが多いが、電動機を変速するのにインバーターを使用する場合、安全増では対応出来ず、耐圧防爆型となる。制御盤は内圧防爆構造に準じ、エアパージを行い、爆発性雰囲気から保護気体により隔離し点火源を共存させないようにしている。
2.防爆用語解説
2種場所の定義
A.異常な状態において危険雰囲気を生成するおそれがある場所で次のような場所をいう。危険性料品を常時取り扱っているが、それらは密閉された容器または設備内に封じられており、その容器または設備が事故により破損した場合、または操作を誤った場合にのみ、それらが漏出して危険な濃度となるおそれがある場所。
B.確実な機械的換気装置により爆発性ガスが集積しないようにしてあるが、換気装置の故障により、危険な濃度となるおそれのある場所。
C.1種場所(通常の状態において危険雰囲気の生成する場所)の周辺または隣接する室内で爆発性ガスがまれに侵入するおそれのある場所。
耐圧防爆構造
容器内に爆発性ガスが侵入して、内部で点火爆発しても、外部に悪影響を与えないようにし、点火源を容器内に隔離する方法で、内部の爆発圧力に耐え、周囲の爆発性ガスへの火炎逸走を防止する性能を容器にもたせる。
安全増防爆構造
点火源をもつ絶縁電線とその接続部を納めた電線管路に対して、絶縁体の損傷、劣化、断線、接続部のゆるみなど、顕在的点火源になるような故障が起こらないように機械的電気的に安全度を増加する。
本質安全防爆構造
正常状態のみでなく、想定した異常状態においても電気火花又は高温部が爆発性雰囲気に対して点火源にならないように消費エネルギーを抑制するものである。
内圧防爆構造
顕在的又は潜在的点火源をもつ電気機器に対して、点火源となり得る部分を周囲の爆発性雰囲気から保護気体により隔離し、爆発性雰囲気と点火源を共存させないようにする。
3.高温対策
医薬向けの乾燥機の場合、機内の温度は100℃を超えることは少ないが、やけどをする温度には達するので、きちんとした保温が必要になる。本体の保温の厚みは標準仕様で50mmにしている。
ヒーター加熱防止装置を設け、制御装置が破損しても、加熱しないように、ヒーターの温度をセンサーで検出して、ヒーターを切る。
4.回転部分
フルオープンタイプの場合、洗浄性を考慮して、回転体がむき出しになっているため、扉を開けたときに、それが動作しないようにインターロックのスイッチを設ける。また、ファンユニット開閉式の装置も同様である。
1.循環運転
循環ダンパーを全て閉め、排気ダンパーを全て開けるとワンパス運転となる。流動層のように乾燥速度が高いものは、ワンパス運転が有効である。しかし箱型乾燥機の場合、乾燥速度が遅く、空気が粉体を通過することによる水分移動と温度低下は流動層に比べ緩慢であるため、ワンパス運転では高温で水分量が低い、乾燥した空気を大量に捨ててしまうので不経済である。したがって、循環運転することで、排気量を減らし、熱効率を上げている。
2.充分な保温
また、乾燥機本体や高温部の保温を行い、装置の表面を常温に保ち、熱ロスを押さえ込んでいる。
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