箱形通気棚式乾燥機の加湿乾燥
15.箱型通気棚式乾燥機の加湿乾燥について
15-1 OD錠の基本性能に基づく技術分類
世代分類 |
定義 |
主な技術の特徴 |
例 |
第一世代
プロセス制御型技術 |
非常に速い崩壊性(10秒以内)を有するが、錠剤としての強度を全く有しておらず(0.5N/mm2以下)、特殊な包装形態を必要とする口腔内崩壊錠 |
鋳型成形:薬物の溶液又は分放談をPTP等の鋳型に流し込み、乾燥固化させ、打錠工程がない。 |
ZyldiS
WOWTAB-wet
Lyoc system |
第二世代
結晶制御型技術 |
適度な崩壊性(30秒以内)と普通錠には劣るがPTP包装に耐えうる程度の錠剤強度(1〜2N/mm2)を有する口腔内崩壊錠 |
湿式又は乾式で低圧打錠して多孔性を付与した後、乾燥等の後処理で強度を付与する |
EMP速崩錠
WOWTAB一Dry
SATAB |
第三世代
処方設計型技術 |
適度な崩壊性(30秒以内)と普通錠と同等以上の錠剤強度(2N/mm2以上)を有することで、錠剤と同じ扱いが可能な口腔内崩壊錠 |
添加剤の選択や処理に特徴を有し、通常の錠剤と全く同じ製造方法で製造される。 |
RACTAB
PEATAB
SUITAB
SUITAB一NEX |
弊社の箱型通気棚式乾燥機は第二世代結晶制御型技術での加湿乾燥工程で使用されます。
第二世代結晶制御型技術の概要は成形性の低い糖類に対し、成形性の高い糖類を結合剤として噴霧し被覆および、または造粒することを特徴とし、錠剤強度をさらに必要とするときには、加湿乾燥することのできるもの
(国際公開パンフレットWO95/20380(対応米国特許5,576,014号、日本特許公報第312141号)
高空隙率を有する低強度の錠剤を25℃70%RHの条件下に置くと初期は吸湿し錠剤重量が増大し一時的に錠剤強度が低下する、しかし一定時間経過後は放湿により錠剤重量が減少し同時に錠剤強度が徐々に増大する。(医薬品製剤化方略と新技術より)
この技術コンセプトと同類の技術として下記ののものがあります。
1) |
アモルファス化した白糖等と薬物の混合物を錠剤化し加湿乾燥処理することにより口腔内崩壊錠とする技術
|
|
2) |
PVP等の水溶性物質を含有させた錠剤を加湿乾燥処理することにより口腔内崩壊錠とする技術 |
3) |
アルコール溶解性物質を含有させた錠剤をアルコール蒸気処理、乾燥することにより口腔内崩壊錠とする技術 |
箱型通気棚式乾燥機による加湿操作
箱型通気棚式乾燥機は加湿された空気を、静置された錠剤に対して、約0.4m/秒の速度で通過させています。
この状態で加熱、冷却、加湿、再乾燥が行われ、確実な結晶変化が促されます。
箱型通気棚式乾燥機は錠剤を動かさないので、強度のない状態で壊れることがありません。 |
|
15-2 加湿乾燥技術
加湿乾燥の技術的課題
箱型通気棚式乾燥機で錠剤や顆粒を湿らせる操作を行う場合、いくつかの技術的課題を解決する必要があります。通常の恒温恒湿槽と違う点は、あくまでも生産機であり、被乾燥物をその環境にされせば良いというものではなく、非乾燥物に設定された空気をばらつきなく吹き付けるイメージとなります。
蒸気を熱交換して加熱するシステムでは、乾燥のための高温の制御と加湿のための低温の制御の両方を安定させることは、けっこう難しいことです。安定させるには下記のことを解決する必要があります。
- 乾燥温度(60℃〜100℃)で大排気量に対応させるために設計されたヒーターは、イナーシャが大きく低温ではオーバーシュートしすぎるので、制御がふらついてしまう。
- 加湿用蒸気を吹き込むことで温度が上昇する。
- ファンが回転するだけで室内温度が上昇する。
- 前工程で乾燥機の内面の温度が上がっているので、温度が下がらない。
- 温度の制御のふらつきが湿度に大きく影響する。
- 通常の湿度計が溶剤を含んだ環境では使えない。
- 0種危険場所であるため、通常の電気品が使えない。
- 給気量と加湿量と温度が影響しあう。
- 条件によっては乾燥機内が水浸しになる。
- 加湿モードになった後、設定湿度に達しない場合がある。
加湿乾燥制御の説明
弊社の箱型通気棚式乾燥機の場合、上記の技術的課題をクリアして製品化に至ることが出来ました。
- プログラムで温度、湿度、風量が自由に設定可能にするために、温度計、湿度計、ガス濃度計、差圧計などのアナログ情報をすべて一台のPLC(プログラムコントローラ)に取り込み、それらのパラメータをタッチパネルから設定出来るようにしました。
- 湿度を制御することは、安定した温度制御に依存します。また、溶剤の存在する環境では、薄膜の静電容量式湿度センサは使えないので、環境に影響されない方式の防爆湿度センサを使用しています。
- 広範囲の乾燥温度に対応させるためには、区分された温度領域におけるパラメータを自動的に切り替えたり、冷却行程でのPID制御の停止、フレッシュエアの冷却などを行なう必要があり、通常の温度調節器との組み合わせでは、操作が非常に複雑になるため、PLCで一元管理させています。
- 循環および排気ダンパーと相対湿度の設定によっては湿度の制御範囲を越えてしまうことがあります。吸気風量が多すぎて設定湿度に達しない場合はアラームを出し、逆に加湿量が多すぎると露滴して乾燥機内に水が溜まりますが、その水をポンプで吸い上げて排出しています。
- 吸気ダクト及び循環ファン入り口に取り付けたそれぞれのピトー管により、吸気風量と循環風量がタッチパネルで直読出来るので、錠剤に与えている空気の状態がリアルタイムで分かります。
- 箱型通気棚式乾燥機内の情報が運転画面に全て表示され、温度、湿度、風速は記録計で記録されます。
15-3 箱型通気棚式乾燥機の特徴
加湿乾燥対応の箱型通気棚式乾燥機は、GMPを考慮した設計となっており、そのレイアウト及び設計は、誤操作の危険を最小にし、交互汚染、塵埃の堆積などで、製品の品質に悪影響を及ぼすことのないように効率よく洗浄保守が出来るようになっています。
@高い洗浄性
乾燥機内部が容易に確認でき、洗浄し易いオープンな構造です。乾燥機の内部は水洗いを前提としているので、水槽を製作するのと同じ考え方で製作しています。板の継ぎ目は、ごみの溜まるような部分がなくなるように、全線溶接し、バフ仕上げを施しました。
A台車クランプ方式
保温されたダクト内にトレイが存在し、キャスター部分は風が通る部分と分離されています。本体に台車を挿入すると、両側からパッキンのついたダクトで挟み込み、シールされる構造です。
Bファンユニット開閉式
ファンユニットがヒンジによって開閉し、ケーシング内にあるファンを装置の外で点検出来ます。
Cパーティション
乾燥機の正面の部分だけが作業エリアに露出する構造となっています。
15-4 タッチパネルデザイン
運転画面
オペレーターが直感的に装置の全体の状態が把握出来るようにデザインしています。
装置の各スイッチや機器の動作状態や、操作量、センサーに入力される値や製品番号、実行中の工程、設定時間、残時間などを表示しています。
通常オペレータが操作するのは、プログラム選択、扉ロック開放、台車クランプ、起動だけとなります。
プログラム画面
ステップごとに乾燥時間、温度、湿度、ファン回転数、ダンパー開度、乾燥移行条件を打ち込むだけで、自動的に乾燥機がプログラムに従って動作します。複数のプログラム画面があり、製品ごとに作成したプログラムを選択することにより、それぞれの乾燥条件で装置を動かすことが出来ます。
プログラム画面はセキュリティが施され、画面を呼び出すためのパスワードを入力します。
15-5 乾燥工程プログラム例
乾燥工程がプログラム出来るので、その錠剤の製造方法に応じた条件で運転可能です。乾燥時間、温度、湿度、ファン回転数、循環ダンパー開度、排気ダンパー開度がステップごとに設定出来ます。
通常の乾燥
|
|
工程 |
ヒータ |
加湿 |
ダンパ |
昇温 |
on |
off |
循環 |
乾燥 |
on |
off |
循環 |
冷却 |
off |
off |
ワンパス |
加湿乾燥 |
|
工程 |
ヒータ |
加湿 |
ダンパ |
加湿 |
25℃ |
75% |
循環 |
加熱 |
40℃ |
off |
(循環)ワンパス |
乾燥 |
40℃ |
off |
(循環)ワンパス |
冷却 |
off |
off |
ワンパス |
加熱加湿乾燥 |
|
工程 |
ヒータ |
加湿 |
ダンパ |
昇温 |
80℃ |
off |
循環 |
乾燥 |
80℃ |
off |
循環 |
冷却 |
off |
off |
ワンパス |
加湿 |
25℃ |
75% |
循環 |
加熱 |
40℃ |
off |
(循環)ワンパス |
乾燥 |
40℃ |
off |
(循環)ワンパス |
冷却 |
off |
off |
ワンパス |
15-6 乾燥機のバリデーション
バリデーションとは、弊社の箱型通気棚式乾燥機が目的とする医薬品を製造するのに、最適な設備であることを科学的に保証することです。箱型通気棚式乾燥機の場合、製品がきちんと加湿、乾燥されることを保証するために、全ての機器が正常に動作しており、全ての計器が正確で、温度、湿度、風速、時間が許容範囲内であることを検証します。
検査項目
据付時的確性検査(IQ) |
機械 |
仕様書確認、据付、外観、構造、寸法、材質、仕上げ、ユーティリティ、気密、騒音、回転 |
制御 |
制御機器、設備環境、電源、機器動作、制御動作、操作画面、警報、停電、セキュリティ、機器設定 |
計器 |
温度計、湿度計、差圧計、濃度計、記録計等の校正確認 |
運転時的確性検査(OQ) |
80℃ |
風量、風速分布、温度分布、静圧、昇温冷却速度、温度分布
無負荷時での検査となります。 |
稼動時的確性検査(PQ) |
弊社範囲外 |
バリデーションの手順
- バリデーション計画書の作成
バリデーションを行う項目、内容、手順、判定基準を明記した書類を作成します。
- 単品受け入れ検査
製作部品、購入部品等が仕様通りのものか確認します。
- 中間検査
完成すると見えなくなる項目について製作途中で検査を行い、写真を用いて記録します。
- 工場出荷前検査 (FAT)
工場内で確認可能なIQ、OQで行う内容を確認し、不具合点を見つけ出して修正し、記録します。
- 据付時的確性検査(IQ)
現地搬入据付、ユーティリティー接続、空調工事完了後、検査を行います。
- 運転時的確性検査(OQ)
据付時的確性検査が完了し客先承認後、検査を行います。
- 稼動時的確性検査(PQ)
客先範囲となります。プラセボ実験等の一部の立会いはご要望により応じます。
15-7 ベンダーオーディット資料
担当者情報
氏名:・・・・ 年齢:・・ 業務内容:・・・・ 経験年数:・・
製品情報
納入実績
箱形通気棚式乾燥機 仕様書、図面、計算書
品質管理
責務 :品質管理者 氏名
一般管理 :長門電機最新組織図
品質保証システム :社内的管理手順書
ドキュメント管理、記録
最新ドキュメントのリスト
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図面、図、仕様書、検査書類等の管理方法
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内部監査とバリデーション
監査実施のための手順書
指摘事項について追跡システム
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是正措置
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教育
経営層の品質ポリシーの周知伝達
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教育の文書化、再教育プログラム
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開発メソッドと設計管理
乾燥機の設計手順書、設計注意事項、客先指定外品メーカーリスト
ライフサイクル文書
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ソフトウエアとプログラム基準
ソフトウェアや設計に対しての考え方の概要書
テスト基準
検査計画書
変更管理
変更管理手順書(変更箇所、変更理由の記述と再検査等の手順)
ドキュメントレビューと承認
プロジェクト文書、設計図面、ソフトウエアのレビュと承認の記録
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