長門電機工作所の技術情報

乾燥機技術文書

6.箱型乾燥機の構造

6-1.箱の保温

乾燥機は通常、熱風を利用しますので、温度分布の均質化、火傷防止、エネルギーロスの防止のため外箱部分に保温をします。内部温度が高くなるほど保温も厚くなります。また、温度が高くなるほど熱膨張も大きくなるので、板厚が大きくなり補強の数も多くなります。

6-2.洗浄性

衛生管理を行う上で、洗浄は非常に重要な要素です。通常の箱型乾燥機の場合、乾燥室だけが見えていて、ヒータやファンが隠れてしまい、メンテナンスが出来ないものがあります。医薬向けのものは、出来るだけ乾燥機内部が容易に確認でき、洗浄し易いオープンな構造でなくてはなりません。洗浄器具が届かないようなデッドスペース部分を出来るだけ作らのないよう設計しています。小型の乾燥機の場合、内部の仕切り板、導風板、棚アングル等がすべて工具なしで分解出来るようにし、それらを取り外してしまうと乾燥室がシンプルな箱になるようにして、洗浄し易くしています。
乾燥室の床面は水勾配をつけて、水が溜まらないようにしています。標準機では扉を開けるとそのまま水が乾燥機の外に出ていくようになっています。また、底がホッパー構造になっているものは必ず水抜きを設けています。
下記の写真はフルオープン型の通気式乾燥機です。扉を開けると乾燥室だけではなくチャンバー室まで開くので、洗浄点検が容易です。また台車においても水洗いしやすいように形状をシンプルにし、水たまりを作らないようにしています。

6-3.溶接

乾燥機の内部は水洗いを前提としているので、水槽を製作するのと同じ考え方で製作します。
耳曲げした板をボルト止めする方法と板の継ぎ目は突き合わせ溶接によるものがあります。前者は歪みがなく仕上げる必要がないがシールが完全ではなくゴミたまり易い。後者はシールが完全でゴミたまりがなく衛生的です。弊社では標準品に採用しています。

6-4.トレイ

粉体が直接触れる部分がトレイです。
並行流の底皿式であっても、比重が軽く飛散し易い粉の場合、飛散防止布をかぶせて乾燥機にかける場合も有ります。
飛散防止布は、通常通気性の良いテトロンの布を使用しています。
パンチングトレイ
通気式乾燥機の場合、金網は使用せず、パンチングで底を打ち抜いたものを使用し、飛散防止布をかぶせる方法を採用している。
トレイ角部詳細
角の部分は粉溜りが出来ないようにR加工し、バフ加工を施す。
テフロンコーティング
耐酸性、耐薬品性、付着性を考慮する場合に施します

6-5.ファンの構造

6-5-1ファンの形式

静圧が低い仕様の乾燥機であればシロッコファンを使用します。循環部にHEPAフィルタ等がある、静圧が高い乾燥機の場合、ターボファンにしています。

6-5-2.駆動方式

医薬品向けの乾燥機でない場合、ファンはベルト駆動にすることがあります。ベルトの交換が必要になりますが、十分余裕のある選定をしておけば、数年に1回程度の交換頻度となります。
ファンの軸部分のシールは通常、弗素樹脂の板を2つ割りにしたものにシャフトと同じ大きさの穴を開けて貫通部分に取り付けております。
医薬向けの装置の場合、汎用モーター直結にして、インバータで変速しています。軸シールはシリコンまたはバイトンのオイルシールを使用しています。

6-5-3.ファンユニット開閉式

ファンユニットがヒンジによって開閉し、ケーシング内にあるファンを装置の外で洗浄点検出来るようにしています。

6-6.ヒータ

6-6-1.電熱ヒータ

ヒータは電熱式の場合、シーズフィンヒータを採用し、乾燥室内に碍子や電熱線が剥き出しにならないようにして、断線や漏電、短絡、引火などがないようにしています。またフィン付なのでヒータと空気の熱伝達効率も高く、ヒータ温度も低く押えられるため、断線の確率も低く押えられています。

6-6-2.蒸気ヒータ

蒸気式の場合はプレートフィンヒータを採用し、充分な電熱面積を確保しています。また、材質をSUS304にしているため、錆の発生がありません。スチーム式の場合特に温度制御が難しく、ハンチングしやすい欠点があります。吸気温度が変わるとヒータ能力が変化するため、ヒータの電熱面積を切り替えられるようにしています。

6-6-3.蒸気制御装置

スチームヒータの温度制御は電磁弁の開閉で行なっています。従来は蒸気による温度制御は精度が必要とされる場合、ダイヤフラム式やコントロールモータ式の比例制御バルブなどを使用しなくてはなりませんでしたが、最近では時間比例式のオンオフPID制御が一般的になり、電磁弁だけで精度の良い温度調節が出来るようになりました。
配管の継ぎ手はユニオンを使用せず、すべてフランジを使用しています。過去にユニオンによる蒸気漏れのトラブルの頻度が高かったため、信頼性を向上させるためにこの方式にしております。

6-7.ダンパ

6-7-1.整流版(段差補正用ダンパ)

各段の通風量の差を無くす為に、たなうけレール奥に段差補正用ダンパを設けてあります。風の流れの関係で風量に若干のばらつきがでるのをこれで補正します。

6-7-2.循環ダンパ、排気ダンパ

排気、循環、各ダンパは、目盛付きハンドルでそれぞれの開度に固定出来るようになっています。ダンパ開度と通風状態の関係を下表に示します。
  • 整流板(段差補正用ダンパ)

  • 循環ダンパ

  • 排気ダンパ

6-7-3.コントロールダンパ

標準のダンパでは手動で開度を決める形式ですが、乾燥状態の変化にともなって風の状態を変化させたい場合、自動的にダンパの開度を制御したい場合があります。比例式のコントロールモータを使用すれば、任意の開度を電気的に設定出来ますので、湿度や品温と連動させ、プログラム調節器の時間信号で開度を切り換えるということが可能です。

6-7-4.遮蔽ダンパ

乾燥機の給排気部分にこのダンパを組み込み、運転中以外は遮蔽している状態にすることにより、乾燥終了後の吸湿や排気からの逆流汚染を防ぐことが出来ます。

6-8.フィルタ

乾燥室内に入る空気が汚れていると製品を汚してしまいます。医薬品の場合は特に厳しく、高性能フィルター(HEPA)を取り付ける場合が少なくありません。フィルタを取り付ける場合、その機械の必要空気量からフィルタの大きさを選定します。また、フィルタの圧力損失に見合うファンを選定して機械を設計し直します。ですから、乾燥機をそのままにしてフィルタを後から取付けたりすると、乾燥能力が足りなくなる可能性があります。特にHEPAフィルタの場合、定格風量を出すのに必要な風圧は500Paと高いため注意が必要です。こういったフィルタを取り付けた場合、その詰まり具合及び交換時期を知るためにマノメータを取り付けます。また、詰まり具合をマノスタースイッチで検出して警報を出すということも可能です。

6-8-1.給気フィルタ

吸気口にフィルタを設けております。水洗い可能な材質を使用しており、カセットにはさみこんで蝶ねじで固定されているので、工具不要です。
標準の使用方法ではフィルタは充分な面積を確保しておりますが、ワンパスで使用するなど、捕集効率が高いものが必要な場合は、機械構造から変更が必要になります。

6-8-2.循環フィルタ

乾燥室直前の位置にHEPAフィルタを設けています。フィルタ専用扉があり、室内から交換できるようにしています。品種の違う製品で使用する場合も交換することで交叉汚染が防げます。
乾燥機内は高温となるため、SUS304性で耐熱仕様の物を使用しています。

6-9.扉

6-9-1.観音扉

乾燥機の扉は堅牢であることとシールが完全であることが要求されます。乾燥室内は高温になるため熱膨張で相当歪んでしまいます。扉は特に歪みの影響を受けやすく、しっかり作られていないとシールがたもてなくなり熱風が吹き出すということもあります。ですから、扉の内部にアングルで骨組を組んで補強しています。また、蝶板やハンドルの金具類も相当な強度が要求されるので、社内で製作しています。

6-9-2.ロックハンドル

ロックハンドルは面積の広いシリコンスポンジパッキンを押えつけるのに充分な強度を持たせることももちろんですが、人手で操作出来ることが必要です。弊社の特製ハンドルの場合、ローラーとテーパーの受け金具を使用しています。

6-9-3.扉ロック装置

運転中や庫内温度が高いなど条件によってエアシリンダを作動させ、扉が開かないようにロックさせます。
扉が閉じられたことを確認して、シリンダが作動し、解除する場合は、制御盤の扉ロック解除スイッチを押すという操作になります。

6-10.乾燥機の材質

水分のあるものを扱いますので、露点温度の関係で室内に水滴が溜ります。このことから、防錆に考慮する必要があります。弊社の乾燥機は特に指定がないかぎり、内部を18ー8ステンレス(SUS304)にしています。また、乾燥物が腐食性の物質であったりすると、一般的には使用されないような高級な材料を使用することもあります。たとえば耐酸性を考慮した場合はSUS316L、耐熱性を考慮してSUS310などを選定します。
扉は熱風が漏れないようにパッキンが入っています。耐熱性、シール性が要求され、径年変化をおこしにくいものを使用する必要があります。冷蔵庫に使用されるような合成ゴムではすぐに割れを生じたり、硬くなったりします。ですから弊社では耐熱性、耐薬品性に優れたシリコンスポンジを使用しております。

6-11.パーティション

大型機を設置する場合、正面の扉部分だけを出して、パーティションで乾燥機を覆い、粉が天井や付属機器につもらないようにします。清掃は乾燥機正面と内部だけとなり清掃の頻度が小さくなります。
機械後部がダーティエリアになりますので、メンテ時に着替えることが必要になります。
装置搬入後にパーティションを行うので、空調バリデーション終了後に乾燥機のIQ,OQを実施することになります。

6-12.台車

6-12-1通常台車

台車ごと乾燥機内に入れてしまうと、車輪に付着したごみが製品に混入する恐れがあります。
下の装置は洗浄性のみ考慮された装置ですのでキャスターごと乾燥機内に入っています。

6-12-2.キャスターもぐりこみ方式

車輪を乾燥機の床下に潜り込むようにして、トレイ部分だけが機内に入る構造です。

6-12-3台車クランプ方式

保温されたダクト内にトレイが存在し、キャスター部分は風が通る部分と分離されています。
本体に台車を挿入すると、両側からパッキンのついたダクトではさみ込み、シールされます。
台車そのものが保温ダクトとなっており、庫内と外部が完全に遮断されます。

6-12-4内台車、外台車方式

床面を走行する台車の上に、乾燥室内を走行するトレイ用の内台車を乗せ、乾燥機にトレイ台車だけを入れる構造です。乾燥機に外台車を連結させ、ストッパーを解放して内台車を押し込んでセットします。

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